2024年10月20日
- 認知行動療法
うつ病改善のための生活記録表を用いたカウンセリング(認知行動療法)
こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンター広島店の岡村です。今回は、うつ病の改善に役立つツールとして広く使用されている「生活記録表」の活用についてお話しします。うつ病は、感情的・身体的なエネルギーが著しく低下し、日常生活の質を大きく損なう病気ですが、医療機関による治療と併用して心理相談室での適切なカウンセリングによって改善することが可能です。そのための有効な手法の一つが、生活記録表を使用することです。
このブログでは、生活記録表がうつ病の改善にどのように役立つか、その使い方や効果について詳しく解説し、日々の生活にどのように取り入れることができるかを紹介します。
生活記録表とは?
生活記録表とは、日々の活動、気分、食事、睡眠、体調、ストレスなどを記録し、自己の状態を客観的に把握できるツールです。特に、うつ病を抱えている方にとって、日々の生活パターンを明確にすることで、症状の増減や特定の状況がどのように影響を与えているかを理解する助けになります。記録を継続することで、自分の行動や感情に対してどのような要因が影響しているかを視覚化し、改善の進展を把握することができます。
生活記録表の主な要素としては以下の項目が含まれます:
- 日々の活動内容
- 気分の変化
- 睡眠時間と質
- 食事の内容や食欲
- 体調の変化
- ストレスレベル
生活記録表の具体的な効果
1. 自己管理能力の向上
うつ病の改善では、自己の状態を客観的に把握し、自己管理能力を高めることが重要です。生活記録表を用いることで、日々の気分や体調の変化を確認し、どのような活動や状況が気分の悪化に寄与しているか、逆に何が症状を緩和しているかを分析できます。これにより、自己管理の意識が高まり、どのような行動がうつ病の改善に役立つのかが明確になります。
2. 早期の兆候を見逃さない
うつ病はしばしば波がある病気です。気分が良いと感じる時期もあれば、突然気分が落ち込むこともあります。生活記録表をつけることで、うつ症状が悪化する兆候を早期に察知することが可能です。例えば、睡眠の質が悪くなったり、食欲が低下したりすると、その後の気分に影響を与えることがあるため、そのようなサインをキャッチしやすくなります。
3. 医師やカウンセラーとのコミュニケーションが円滑になる
うつ病の改善では、医師やカウンセラーとのコミュニケーションが重要ですが、自分の状態をうまく言葉で表現できないことも多いです。生活記録表は、そのような場合に非常に役立ちます。記録されたデータを医療専門家に見せることで、日常生活で何が問題となっているかを客観的に伝えることができ、改善の進行状況をより正確に評価してもらうことができます。
4. 行動活性化の促進
うつ病の改善において効果的なアプローチの一つに、行動活性化というものがあります。これは、うつによる無気力や行動抑制を改善するために、意図的に活動量を増やす療法です。生活記録表を使用すると、どれだけの活動をしたかが一目でわかるため、行動活性化の進行状況をチェックするのに最適です。記録をもとに、少しずつ活動を増やしていく目標を立て、実行することができます。
生活記録表の効果的な使い方
1. 継続的に記録することが重要
生活記録表は、短期間だけではなく、長期間にわたって記録を続けることが重要です。うつ病の症状は日々変化するため、1日ごとのデータだけではなく、1週間、1ヶ月といったスパンでの変化を見ることで、より有効な改善計画を立てることができます。特に、改善の進行や介入の効果が長期間でどう変わるかを確認するためにも、記録の継続が必要です。
2. 記録は簡単で良い
記録をつけること自体がストレスになってしまっては意味がありません。生活記録表はシンプルに、できるだけ負担にならない方法で記入することが大切です。1日の終わりに数分間、気分や活動について簡単に振り返るだけでも十分効果があります。テンプレートを使ったり、アプリを活用したりして手軽に取り組むことをおすすめします。
3. ポジティブな行動にも注目する
うつ病に悩む方は、ネガティブな感情や状況に注目しがちですが、生活記録表ではポジティブな行動や感情にも注目しましょう。例えば、「友達と会った」「少しだけでも外出できた」など、小さな成功や楽しい瞬間を記録することで、自己評価のバランスが取れ、少しずつ前向きな変化を実感することができます。
まとめ
うつ病の改善には時間がかかることもありますが、生活記録表を用いることで、自分自身の状態を客観的に把握し、症状の変化を追跡することが可能です。記録を通じて自己管理能力が高まり、医療専門家との連携も円滑になることで、うつ病のカウンセリングがより効果的に進むでしょう。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店ではスマホを使って簡単に生活記録表を入力できる独自のツールを用いたうつ症状へのカウンセリングを行っています。もし、うつ症状に関してお悩みの方がいらっしゃれば、どうぞお気軽にご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店
https://hiroshima.cbt-mental.co.jp/
生活記録表作成補助ツール
https://community.camp-fire.jp/projects/590151/activities/567008
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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