2024年09月29日
- 認知行動療法
うつ病へのカウンセリング
皆さんこんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター広島店の岡村です。今回は、うつ病に対するカウンセリングの一つとして、認知行動療法(CBT)がどのように進められるのかをご紹介します。認知行動療法(CBT)は、うつ病をはじめとするさまざまな心理的問題に対して効果的であることが、多くの研究で示されています。その根本的な考え方は、「人は出来事そのものではなく、その出来事をどのように捉えるかによって感情や行動が影響される」というものです。たとえば、同じ状況に直面しても、「自分にはできる」と前向きに捉える人もいれば、「どうせうまくいかない」と悲観的に捉える人もいます。このような認知(思考)の違いが、感情や行動に大きく影響します。
認知行動療法では、まず自分の認知のパターンを理解し、それがうつ症状にどのように影響しているかを振り返ります。そして、その認知が非現実的である場合には、より現実的でバランスの取れた考え方に修正していくことを目指します。
うつ病に対する認知の変化
うつ病に悩む人は、一般的に次のような認知の特徴を持つことが多いです:
- 全か無か思考: 物事を極端に白か黒かで判断する。たとえば、「一度ミスをしたら、すべてが台無しだ」と考える。
- 自己否定的な思考: 自分に対して過度に厳しくなり、他人よりも劣っていると感じる。「自分は何をやってもだめだ」「みんなに迷惑をかけている」というような思考が典型的です。
- 未来に対する悲観的な見方: 将来のことを考えると、不安や悲観的な考えが頭を支配します。「これからもずっと良くならない」「今の状態が永遠に続く」といった絶望感を感じることが多いです。
これらの思考パターンは、うつ症状をさらに悪化させる原因となります。そこで、認知行動療法ではこれらの「自動思考」と呼ばれる思考パターンに気づき、それがどれだけ現実的かを冷静に見つめ直す練習を行います。
認知の修正方法
自動思考に気づいたら、次のステップとして、その思考を検証し、現実的な代替思考を見つけることが重要です。ここでは、いくつかの具体的な方法をご紹介します。
1. 証拠を集める
まずは、その思考に対する証拠を集めます。たとえば、「自分は何もできない」という思考が浮かんだとき、過去に成功した経験や評価された経験を思い出し、その思考が必ずしも真実ではないことに気づくようにします。
2. 反証を考える
ネガティブな思考に対して、逆の立場に立って考えてみることも有効です。「自分は役立たずだ」という思考に対して、「実際には、家族や友人が自分に感謝してくれている場面があったかもしれない」と、反証を見つけてみます。これにより、よりバランスの取れた見方ができるようになります。
3. 視点を変える
自分の思考に距離を置き、客観的な視点から見つめ直すことも重要です。たとえば、他人が同じ状況に置かれていたら、どのようにアドバイスをするかを考えてみると、自分がどれだけ厳しく自分を責めていたかに気づくことができます。
行動活性化の重要性
認知行動療法では、認知へのアプローチだけでなく、行動にも焦点を当てます。うつ病のクライエントさんは、しばしば活動量が減り、自室で過ごす傾向があります。これは、気分の低下により行動が制限される「気分一致行動」が頻繁に起こるためです。しかし、活動を減らすことはかえって症状を悪化させる原因にもなります。
そこで、行動活性化と呼ばれる手法を用いて、少しずつ活動を増やしていくことを目指します。たとえば、毎日5分でも散歩をする、簡単な家事をこなすなど、小さな目標を設定し、達成感を得ることで、徐々に活動レベルを上げていきます。この過程では、無理をせず、自分ができる範囲で行動を続けることが大切です。
認知行動療法におけるカウンセラーの役割
認知行動療法のカウンセラーは、単に相談者の話を聞くだけではなく、相談者が自分で考え、行動を変えるためのサポートを行います。具体的には、相談者と一緒に問題を整理し、現実的な目標を設定し、その達成に向けて具体的な方法を提案します。また、セッションの中で話し合った内容を日常生活で実践できるように、宿題を出すことが一般的です。
カウンセラーは強制的に何かをさせることはせず、あくまで相談者と協力しながら進めていきます。相談者が自分のペースで取り組み、少しずつ変化を実感できるよう、カウンセラーは寄り添い、サポートします。
認知行動療法の効果を最大化するために
認知行動療法は、多くのエビデンスに基づいた改善法ですが、その効果を最大限に引き出すためには、以下の点が重要です。
- 積極的な参加: 相談者自身が積極的にセッションに参加し、カウンセラーと協力して取り組むことが大切です。宿題もただの義務ではなく、自分自身のために行うものと捉えることで、より効果が期待できます。
- 忍耐強く続けること: 認知や行動のパターンを変えることは一朝一夕にはいきません。小さな変化を積み重ねていくことで、徐々に大きな成果が現れてきます。焦らず、ゆっくりと取り組む姿勢が求められます。
- サポートネットワークを活用する: 家族や友人など、周囲のサポートも非常に重要です。カウンセリングの内容を共有し、理解してもらうことで、日常生活でも支えを得られるようにします。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店では、うつ症状に悩む方が自分らしい生活を取り戻せるよう、専門的なサポートを提供しています。ご興味がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店
https://hiroshima.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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