2024年09月18日
- 認知行動療法
盗癖(クレプトマニア)とは?その原因とカウンセリングの視点
こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンターの岡村です。今回は、衝動制御困難の困りごとである「盗癖(クレプトマニア)」について解説します。盗癖とは単に物を盗む行為ではなく、その背後には心理的な要因が複雑に絡み合っています。この記事では、盗癖の原因、カウンセリング法、そして現代における新しいアプローチについてお伝えします。
盗癖(クレプトマニア)とは?
盗癖は、金銭的な必要性がないにもかかわらず、物を盗む衝動を抑えられない症状です。盗癖を持つ人々は、盗みの行為自体にスリルや快感を感じ、その後に強い罪悪感や後悔を抱くことが多いですが、次第にその衝動に再び支配されてしまいます。このサイクルが繰り返され、日常生活や社会的な活動に悪影響を及ぼすことがあります。
盗癖の行動は一般的には青年期に始まることが多く、年齢を重ねてもその行為が続く場合があります。重要なのは、これが単なる「悪い癖」ではなく、衝動をコントロールできない深刻な精神的な疾患であるという点です。
盗癖の原因とは?
盗癖の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っています。以下はその主な原因として考えられるものです。
- 心理的要因
不安やストレス、抑うつ状態が盗癖と関連していることが多いです。盗みの行為は、一時的にこれらのネガティブな感情から逃れるための手段となることがあります。 - 神経生物学的要因
一部の研究では、盗癖が脳内の神経伝達物質であるドーパミンに関わる報酬系の異常と関連している可能性が指摘されています。物を盗んだ後に感じる高揚感が、脳内で強化され、その行動が繰り返されることにつながるのです。 - 遺伝的・家族的要因
家族内に盗癖や他の衝動制御困難を持つ人がいる場合、その影響を受けやすいとされています。これにより、盗癖が遺伝的な背景を持つ可能性が考えられています。
盗癖へのカウンセリング
盗癖に対するカウンセリングには、認知行動療法(CBT)が最も効果的とされています。CBTは、衝動的な行動を引き起こす認知のパターンに働きかけ、行動をコントロールするための新しいスキルを習得するためのカウンセリング法です。
1. 認知の修正
盗癖を持つ人々は、自分の行動に対して誤った認知を持っていることが多いです。例えば、「一度盗みを始めたらやめられない」「自分には他の手段がない」という信念です。これらの思考を現実的で建設的なものに修正することが、盗癖支援の第一歩となります。
2. 衝動管理のスキル習得
盗癖の衝動に対処するために、深呼吸やリラクゼーション法、自己対話を用いた衝動コントロールの技術を学びます。衝動が強くなる状況を予測し、それに対処する具体的な方法を計画することが重要です。
3. 健康的な行動の代替策
ストレスや不安を感じたときに盗みの衝動が強くなる場合、他の健康的なストレス解消法を見つけることが盗癖支援の一環です。趣味や運動、友人との交流といった活動が、衝動を抑えるのに役立ちます。
4. リラプス・プリベンション(再発予防)
カウンセリングが進む中で、盗癖の再発を予防するためのスキルも養います。再び衝動が強くなる場面に備えて、どのように対処するかを事前に計画し、具体的な行動をシミュレーションすることが再発を防ぐために非常に重要です。
薬物療法の併用
認知行動療法に加えて、場合によっては薬物療法が併用されることもあります。抗うつ薬や抗不安薬が衝動を抑える助けとなる場合がありますが、薬物療法はあくまで補助的な手段です。根本的な解決には、やはり心理療法が不可欠です。
現代における盗癖改善支援へのアプローチ
盗癖に対する社会の理解は徐々に進んでいます。従来は「悪い行動」としてのみ捉えられていた盗癖ですが、今ではその背景にある精神的な問題に焦点が当てられるようになってきました。また、デジタル療法やオンラインでのカウンセリングの導入も進んでおり、盗癖支援のアプローチも多様化しています。
今後も、盗癖に対する理解がさらに深まり、適切な支援を受けることができる環境が広がることが期待されます。
まとめ
盗癖(クレプトマニア)は、衝動的な行動を制御できない精神疾患であり、その原因には心理的、神経生物学的、遺伝的な要因が絡んでいます。しかし、認知行動療法(CBT)を通じて、盗みの衝動をコントロールし、再発を防ぐことが可能です。盗癖に悩んでいる方やその家族の方は、専門的なサポートを受けることで改善への道を見つけることができるでしょう。
認知行動療法カウンセリングセンターでは、盗癖に対するカウンセリングを提供しています。お気軽にご相談ください。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店
https://hiroshima.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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