2024年11月26日
- 認知行動療法
母子分離不安へのカウンセリング(認知行動療法)
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター広島店スタッフです。当センターでは、広島を拠点に地域の皆様に寄り添いながら、認知行動療法(CBT)を用いたカウンセリングを提供しています。今回は「母子分離不安」について、その実態や対応方法を詳しく解説します。親子関係において多くの方が直面するこの問題について、一緒に考えていきましょう。
母子分離不安とは
母子分離不安とは、子どもが家族や親しい人との離れ離れの状態に強い不安を感じる心の状態を指します。これには、幼児期や成長段階での自然な心の揺れも含まれますが、日常生活に支障をきたすレベルでの不安は、専門的な対応が求められる場合があります。
主な原因
母子分離不安は、以下のようなさまざまな要因から引き起こされることがあります:
- 遺伝的要因や生物学的要因
- 喪失体験(例えば、離婚や引っ越し、親しい人との死別)
- 家庭環境や育児方針の影響
分離不安を抱えるお子さんは、日々の生活で次のような行動を示すことがあります:
- 保護者が少しでも視界から消えると泣き続けて探し回る
- 一人で学校に行くことを強く拒む
- 親が外出することに対して過度な不安を抱く
- 就寝時に家族がそばにいないと眠れない
不安を乗り越える力を育むには
不安を感じるのは人間として自然なことです。特に幼少期の子どもは、まだ「安全」と「危険」を自分で判断する力が育っていないため、不安なときに大人の助けを求めるのは当然のことです。そして、この助けがあることで子どもは「自分は守られている」という安心感を得られます。
安心感の積み重ねの重要性
子どもが不安を感じたときに安心させてあげることは、とても大切です。安心できる環境があることで、子どもの心は安定し、安心を土台に少しずつ成長していきます。
ただし、子どもが「ずっと親がそばにいないと安心できない」と感じてしまうと、不安を自分の力で乗り越える機会が減ってしまうことがあります。そのため、安心を与えながらも、少しずつ「自分で不安に向き合う力」を育てる経験を積み重ねることが必要です。
たとえば、
- 「親は必ず戻ってくる」と伝えて、短い時間だけ部屋を離れる
- 「一人で〇秒待てたね!」と、少しでも待てたことを伝えて褒める
こういった小さな成功体験を繰り返していくことで、子どもは少しずつ「一人でも大丈夫かも」と安心を自分で感じられるようになります。
親が子どものそばにいて安心を与える時間も、そばを離れて一人で待つ時間も、どちらも成長に欠かせない大切な経験です。この2つをバランスよく取り入れながらサポートすることが、子どもの心をより豊かに育てる鍵となります。
母子分離不安へのカウンセリングアプローチ
認知行動療法(CBT)は、母子分離不安への効果的なアプローチの一つです。以下に、カウンセリングの具体的な流れをご紹介します。
1. 一人で過ごせる瞬間を見つける
まず、家庭の中で「一人で過ごせている瞬間」を探します。例えば、母親がトイレに行っている間や、子どもが一人で遊んでいる時間が該当します。
例:
「君、すごいね!さっきの1分間、一人で過ごせたよ!」と具体的に声をかけることで、子どもに成功体験を意識させます。
2. 子ども自身の目標を確認する
子どもに対して、「次はどうしたい?」と聞き、自分の目標を確認します。同時に、家族のニーズも一緒に話し合い、両者の思いが一致する形で次のステップに進みます。
3. 少しずつ一人で過ごせる機会を増やす
具体的な取り組みとして、最初は数秒間、次に数分間と、短い時間から一人で過ごせる機会を少しずつ増やしていきます。たとえば、親が少しの間部屋を離れ、その間、子どもが一人で好きな遊びをして自由に過ごすなど。
離れる際に、「離れることは、いなくなることではない」「離れても必ず戻る」というメッセージを子供に伝えておきます。
4. 達成を認め合う
子どもが一人で過ごすことに成功したときは、家族と一緒にその達成を喜び合います。うまくいかなかった場合でも、「ここまでできた部分」を評価し、次につなげます。こうした経験を積み重ねることで、子ども自身が「次はこれをやってみたい」と前向きな目標を持つようになることがよくあります。
まとめ
母子分離不安は、親子関係においてよくある課題です。しかし、それを乗り越えるプロセスは子どもにとって成長の機会であり、親にとっても大切な学びの場となります。
認知行動療法カウンセリングセンター広島店では、親子それぞれのペースを大切にしながら、不安を少しずつ安心に変えていくお手伝いをしています。
一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。認知行動療法カウンセリングセンター広島店
https://hiroshima.cbt-mental.co.jp/
——代表プロフィール——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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